toshc asbestos measurement 2

東京労働安全衛生センター

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更新日 2012-01-26 | 作成日 2008-03-23

ひる石中のトレモライト


 前項ではトレモライトを例にへき開(Cleavage)粒子と石綿様繊維構造(Asbestiform)の違いについて解説し、その中でひる石吹付け中に典型的な石綿様繊維構造のトレモライトが含まれていることを指摘した。ひる石(Vermiculite、バーミキュライト)中の角閃石の不純物は世界的に問題となっており、米国のモンタナ州リビー鉱山では労働者と周辺住民に多くの被害がでている。リビーのひる石中の角閃石はトレモライト-アクチノライトの他、同じ系列の角閃石でウインチャイト、リヒテライトの新手のアスベストが登場している。問題は日本においてこれらのひる石が輸入されたかどうか、輸入されたとしたら、いつごろ、いかなる用途で使用されたのか、ということである。最も使用された可能性が高いもののひとつが建物の主に天井に吹付け施工される吹付けひる石である。これまで実際に吹付けひる石からトレモライトが発見された例は多く、このコーナーではその中の一つを顕微鏡で観察し、検討した。



1.実体顕微鏡観察

ひる石中のトレモライトは繊維束状で比較的見つけやすい。
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長さ1mm弱の大きなトレモライトを含む塊。盤状の鉱物と混ざってトレモライトの細い繊維が観られる。
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 ひる石中のトレモライト(アクチノライト、ウインチャイト、リヒテライトの可能性もあるが、それらも合わせてトレモライトという)は慣れれば実体顕微鏡で比較的容易に見つけられる。この試料には意図的に含有させたと思われるクリソタイルも含有しており、クリソタイルはトレモライトよりもはるかに容易に見つかる。トレモライトと長方形のひる石は一見間違えやすいが、後者は盤状でピンセットでつまむと折れたり切れたりする。トレモライトは硬く繊維方向に割れる。クリソタイルの短い繊維束とも間違えやすいが、クリソタイルの方が感触が柔らかくピンセットでつまむと裂けずに曲がる。トレモライトは直線的で、硬く曲がらずに、縦方向に裂ける傾向がある。この試料は着色されていて色では判断できない。

2. 偏光顕微鏡観察

実体顕微鏡でピックアップしたトレモライトと思われる繊維束をスライドグラス上で分散染色浸液と混ぜ合わせ、実体顕微鏡で見ながら繊維を少しつぶして、カバーグラスをかけて観察する。
左:×100直交ニコル、右:×100直交ニコル+530nm鋭敏色板
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左:×400直交ニコル、右:×400直交ニコル+530nm鋭敏色板、上を拡大したもの。
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 偏光顕微鏡は実体観察に優れていて、繊維の細かい構造が良く見える。特にひる石中の石綿のように細かい粒子の付着が多い試料は粒子に妨害されず良く見える。写真の繊維の束は天井から落ちると、束がほぐれて短繊維に分かれてゆく。人が吸うと肺の中でも分裂する。角閃石の石綿は肺に入ると容易には溶解されない。生体内持続性と繊維の形態が発がん性の決め手になる。ガンを起こす性悪の極細繊維、それがトレモライトの実体であり、偏光顕微鏡はそのことを理解するための効果的な道具といえる。

3. 位相差分散顕微鏡観察

写真は全て×400

浸液の屈折率:1.605 
偏光板なしの色(Non-polar):金黄 
偏光板による色の変化 II(Parallel-polar):明 丄(Cross-polar):暗 (II:繊維向きと偏光が平行 丄:繊維向きと偏光が直交)

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浸液の屈折率:1.618 
偏光板なしの色(Non-polar):桃 
偏光板による色の変化 II(Parallel-polar):橙 丄(Cross-polar):紫 (II:繊維向きと偏光が平行 丄:繊維向きと偏光が直交)
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浸液の屈折率:1.620 
偏光板なしの色(Non-polar):桃 
偏光板による色の変化 II(Parallel-polar):橙 丄(Cross-polar):紫 (II:繊維向きと偏光が平行 丄:繊維向きと偏光が直交)
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浸液の屈折率:1.634 
偏光板なしの色(Non-polar):青 
偏光板による色の変化 II(Parallel-polar):濃青 丄(Cross-polar):薄青 (II:繊維向きと偏光が平行 丄:繊維向きと偏光が直交)
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浸液の屈折率:1.640
偏光板なしの色(Non-polar):青 
偏光板による色の変化 II(Parallel-polar):濃青 丄(Cross-polar):薄青 (II:繊維向きと偏光が平行 丄:繊維向きと偏光が直交)
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 東京労働安全衛生センターの偏光顕微鏡にはMcCrone社製の分散対物レンズを付けてある。通常の定性分析にはそれで十分だが、このように微妙な分散色を観る場合は位相差分散顕微鏡を使用した方が鮮明な画像が得られる。
 石綿は鉱物性の結晶構造を持つ繊維である。繊維のように縦横の長さに違いがある結晶に光が通ると繊維の水平方向に振動する光と垂直方向に振動する光の屈折率に微妙な違いが生じることがある。この違いを色に換えて微妙な屈折率の違いを読み取るのが分散染色法である。試料を一定の屈折率を持つ浸液に浸った状態で位相差分散顕微鏡で観察し、浸液の屈折率を上げてゆくとする。試料の水平・垂直の屈折率が共に浸液の屈折率よりも低い(けれども両者が近い)ときは、試料は黄色などの暖色に見える。トレモライトは水平方向の屈折率は垂直方向の屈折率よりも大きいので、浸液はある屈折率を境にまず垂直方向の屈折率を超える。そうすると偏光板を繊維と直交させる観察(垂直方向の光のみの観察)で寒色が現れる。このトレモライトの観察では浸液の屈折率が1.605のときは両方とも金黄色なので、屈折率は水平・垂直方向ともに1.605よりも高い。浸液の屈折率が1.618のとき偏光板を繊維と直交させると青が現れたので、垂直方向の屈折率は1.605~1.618の間にあることがわかる。同様に水平方向の屈折率は1.620~1.634の間にある。もっと細かく浸液の屈折率を変えると、正確に試料の屈折率がわかる。このようにひる石に含まれている石綿のプロフィールを集めてゆくことで、日本の吹付けひる石の特徴が把握され、危険なひる石吹付けを特定することが可能になる。