Vermiculite

 

バーミキュライト対策

日本で建材として広汎に使用されているバーミキュライト(ひる石)に石綿含有の可能性があることが指摘されています。ここではバーミキュライト対策を考えるために分析についての質問にお答えします。バーミキュライト全般についてのQ&Aは中皮腫・じん肺・アスベストセンターのホームページhttp://www.asbestos-center.jp/index.shtmlをご覧下さい。

バーミキュライト分析 Q&A


Q01 アスベストとは何ですか?

Q02 バーミキュライト(ひる石)とは何ですか?

Q03 バーミキュライト中の石綿含有にはどのような場合が考えられますか?

Q04 ウインチャイト、リヒテライトとは何ですか?

Q05 バーミキュライト中の石綿は加熱処理で溶融してしまわないのですか?

Q06 吹付けバーミキュライトの石綿の有無は目で見れば分かりますか?

Q07 自宅の天井に吹付けバーミキュライトのようなものがあります。どうしたら良いでしょうか?

Q08 バーミキュライト中の石綿の分析方法にはどのようなものがありますか?

Q09 JIS A 1481でバーミキュライト中の石綿は分析できますか?

Q10 JIS法でウインチャイト、リヒテライトはトレモライトとして検出されるのでは?

Q11 JIS法の分析結果がトレモライト(クリソタイル)含有でしたがどうしたらよいでしょうか?

Q12 それでは、日本の吹付けバーミキュライトはどのように分析すればよいのでしょうか?

Q13 これまでに分析された試料も全て分析をやり直す必要がありますか?

Q14 石綿を含有する吹付けバーミキュライトのある自宅で空気中の石綿濃度測定を行いましたが外部とかわらない石綿濃度でした。このまま住み続けても大丈夫?

Q15 天井の石綿含有吹付けバーミキュライトの対策として膜天井工事は有効ですか?

Q16 園芸用バーミキュライトには石綿は入っていないのですか?

Q17 バーミキュライト中の石綿を光学顕微鏡で分析してもわからないというのは本当ですか?

Q18 石綿の分析には様々な装置を使用しますが、それらの特徴を教えて下さい。

Q19 バーミキュライト中の石綿分析方法を実際に学ぶにはどうしたら良いですか?

バーミキュライト分析 Q&A

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Q01 アスベストとは何ですか?
 アスベストは石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれる天然の繊維状鉱物です。広く商業利用されたクリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)が有名ですが、日本の石綿障害予防規則の解説ではこれら以外にトレモライト、アクチノライト、アンソフィライトの計6種類を石綿としています1)。しかし近年では石綿と似た形状の繊維状鉱物の発ガン性が指摘されており、これらも含めて石綿とする方向にあります。このページではこうした傾向と実際に米国において石綿と同様の被害が発生している点1)2)、EPA(米国環境保護庁)、ATSDR(米国毒性物質登録管理局)の米国の主要な関連機関がウインチャイト、リヒテライトを石綿と認定している点2)3)、ISO(国際標準化機構)の石綿分析の国際規格においてこれらを石綿として分析対象としている点4)、そして何よりも定義に固執して対策が遅れることがあってはならないとの考えから、ウインチャイトとリヒテライトを石綿とします。

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Q02 バーミキュライト(ひる石)とは何ですか?

 バーミキュライト(ひる石)はシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、カリ分(K2O)を含む輝岩という岩石が、熱水の影響でアルカリ分を逸脱して水分が加わり雲母の性質を帯びた鉱物をいいます。日本では花崗岩が長い年月の間に風化した加水黒雲母類も含めて蛭石、バーミキュライトと呼んでいます5)。石綿はケイ酸塩鉱物ですがそれに近いケイ酸塩鉱物の1種です。通常バーミキュライト鉱石を約1000℃で加熱焼成し層間の結晶水を気化し層間を膨張させたものを、園芸用の土壌改良剤の他、軽量、耐熱、吸収性、無臭のため吹付け仕上げ材、保温材などに混ぜて利用されています。製品としてのバーミキュライトはJIS A 5009(1972年)に規定されており、ここには日本およびアメリカ産のものが記載されています。

 
Q03 バーミキュライト中の石綿含有にはどのような場合が考えられますか?

バーミキュライト製品の中でも施工数の多い吹付けバーミキュライトに石綿が含有している可能性は、第1に主にクリソタイルの意図的な含有です。経済産業省の建材データベースによると、ABC商会のミクライトは1965~1966年で24.4%の石綿含有率、1966~1971年で17.5%の石綿含有率、1971~1977年で12.8%の石綿含有率、1977~1988年で4.6%の石綿含有率、ABC商会のウォールコートM折板用では1971~1989年で39%の石綿含有率とされています。これらの意図的含有については含有率が高く、偏光顕微鏡でも位相差分散顕微鏡でも容易に確認することができます。


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偏光顕微鏡(クロスニコル、100倍)左上が板状のバーミキュライト、中央付近の細い繊維がクリソタイル。

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位相差分散顕微鏡(RI:1.550、100倍)上の写真と同じ視野でクリソタイルの分散色が観られる。


問題は不純物としての石綿の含有です。バーミキュライトも石綿も天然鉱物ですから鉱脈が近接していれば混ざり合う可能性があり、角閃石も蛇紋石も不純物として含有する可能性はありますが、日本国内で不純物として石綿が現れる可能性は米国のモンタナ州リビー鉱山産のバーミキュライトに含まれるトレモライトに近いウインチャイト/リヒテライトなどの角閃石系石綿が最も可能性が高いと考えられ6)、それ以外の南アフリカ産、国産については石綿が混ざる可能性はほとんどなく、中国産などは不明ですが、これまでに石綿を含有していたという報告はありません。従って不純物として含有している、つまり含有率が非常に低い可能性のあるウインチャイト/リヒテライトなどの角閃石系石綿を見逃さない分析方法が求められます。


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石綿含有のない国産のバーミキュライト。

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角閃石系石綿を含有するリビー産バーミキュライト

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Q04 ウインチャイト、リヒテライトとは何ですか?
リビー鉱山のバーミキュライト工場では1950年代から角閃石系石綿による汚染が問題になっていました。当時はそれをトレモライト石綿としていましたが、1997年の国際鉱物学連合(IMA)の鉱物の命名基準の変更により、それまでトレモライトとされてきたカルシウム角閃石グループの鉱物からナトリウムを含む鉱物をナトリウム-カルシウム角閃石としてリヒテライト(Richterite)およびウインチャイト(Winchite)が新たに分類されました7)。これらが石綿かどうかが問題なのですが、実際に健康被害が出ている点、石綿と同様の被害を発生させる繊維状鉱物を石綿とする国際的な傾向がある点、現にEPA(米国環境保護庁)、ATSDR(米国毒性物質登録管理局)ではこのような広い意味で石綿を定義しウインチャイトとリヒテライトを石綿としている点2)3)、ISO(国際標準化機構)の石綿分析の国際規格においてこれらを石綿として分析対象としている点4)、何よりも定義にこだわり対策が遅れることはあってはならない点から、石綿とみなされると考えます。

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Q05 バーミキュライト中の石綿は加熱処理で溶融してしまわないのですか?

 たしかに石綿は1000℃を超えると熱により溶解が始まりさらに加熱を続けると溶融して繊維構造がなくなり石綿ではなくなります。現在研究が進んでいる溶融処理技術はこれにより石綿を無害化しようとするものです。バーミキュライトは製造の過程で1000℃の加熱により膨張させますが、これにより石綿が完全に無害化するという証拠はありません。逆にEPA(米国環境保護局)の調査では米国で売られている「ゾノライト」という膨張後のバーミキュライト製品には0.1〜1.88%の石綿含有があるとしています3)。従って加熱によって石綿がなくなることはないと考えられます。

 
Q06 吹付けバーミキュライトの石綿の有無は目で見れば分かりますか?

 非常に多くの施工例を見ている熟練した業者の中で国産と米産または南アフリカ産の区別がつくという方がいると聞きますが、基本的には目で見ただけでは石綿含有の有無は判断できません。吹付けバーミキュライトは染料で着色されている場合、表面に塗装が施されている場合があり、これらは見ただけでは吹付けバーミキュライトであるかどうかも分からないことがあります。以上から適切な分析は必須といえます。

 

Q07 自宅の天井に吹付けバーミキュライトのようなものがあります。どうしたら良いでしょうか?

 吹付けバーミキュライトでも表面が固くと塗装されていて石綿が中から飛散する可能性のないものは建物の解体工事の際に調査を実施すれば良いのでそれまでは触らないことが重要です。
 接触すると表面が容易に削れて粒子が飛散する、またはほこりのようなものが落ちる場合は石綿含有の有無を調査することをお勧めします。賃貸などでご自分の所有建物ではない場合は、勝手に試料を採って調べることはできないので建物の所有者または管理者にお問い合わせください。ご自分の所有する建物で含有の有無を調査する際でも基本的には自分で吹付けを削り取ったりせずに、調査分析をおこなう機関や人にご相談下さい。
 吹付けバーミキュライトの石綿含有の有無が分からず、そのまま居住しなければならない場合には、できるだけ吹付け面に力を加えないようにして、吹付けから発生したと思われるホコリは濡れぞうきんなどで拭き取ることが曝露予防のために重要です。

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Q08 バーミキュライト中の石綿の分析方法にはどのようなものがありますか?

 ISO(国際標準化機構)のISO/CD22262-1(2009/10草案段階)4)とEPA(米国環境保護庁)のEPA/600/R-04/0448)、日本ではJIS A 14819)があります。ISOの方法は建材全般の分析方法、EPAによる方法は米国で広く普及しているバーミキュライト天井裏断熱材の分析方法で、これらの方法は主に実体顕微鏡と偏光顕微鏡を使用する方法です。JIS法はこれらと全く異なりX線回折法を使用する方法です。

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Q10 JIS A 1481でバーミキュライト中の石綿は分析できますか?

 JIS法のバーミキュライト分析方法は、顕微鏡観察がないため、繊維状ケイ酸塩鉱物という石綿の定義の「繊維状」を確認していないという問題点が指摘されています。また0.5%トレモライト、0.8%クリソタイルとの比較であることから、それ未満の含有率のものは含有なしとなります。つまり0.1<〜<0.5%の含有率の試料は含有なしとなってしまいます。マイナス側に間違える(False negative)つまり含有のあるものをないとする間違いとプラス側に間違える(False positive)つまり含有のないものをありとする間違いの両方を起こす可能性があります。JIS法のバーミキュライト中の石綿分析方法は、あくまでも0.5%を超える角閃石(石綿とは限らない)、0.8%を超える蛇紋石(石綿とは限らない)の含有の有無を判定する方法でしかなく、バーミキュライトに含まれる含有率の低い角閃石系石綿を適切に定性できる方法ではありません。

 
Q11 JIS法でウインチャイト、リヒテライトはトレモライトとして検出されるのでは?
 ウインチャイトとリヒテライトはトレモライトと同じ角閃石なのでJIS法のバーミキュライト分析方法のX線回折分析により0.5%以上含有していれば含有ありとなりますが、0.5%未満のものは含有なしとなります。またバーミキュライトの分析方法ではなく通常の建材の分析方法を採った場合には、X線回折法では含有率が低く回折ピークは現れず、位相差顕微鏡法では実体顕微鏡を使用せずに平均化した粉砕試料から微量の角閃石系石綿を見つけることは難しいと思われます。
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Q12 JIS法の分析結果がトレモライト(クリソタイル)含有でしたがどうしたらよいでしょうか?
 Q07でお答えしたように、JIS法のバーミキュライト分析では含有ありのものをなしとする可能性と含有なしのものをありとする可能性があります。基本的に再分析が必要と思われますが、その分析の際に偏光顕微鏡または位相差分散顕微鏡によりトレモライト(クリソタイル)を確認しているのであれば、再分析なしで含有ありとして良いと思われます。

 

Q13 それでは、日本の吹付けバーミキュライトはどのように分析すればよいのでしょうか?

 基本的にISO/CD22262-1の方法で分析が可能です。EPA法の沈降法は吹付けバーミキュライトのように塗料、染料、接着剤が付着している材料の場合、大部分が沈降してしまいあまり効果が期待できないという報告があります10)。私たちが試行した吹付けバーミキュライト中の石綿分析方法は以下の通りです。
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 実体顕微鏡観察による石綿繊維の分離には多少の慣れが必要ですが、誰でもできるようになります。角閃石石綿の繊維束はグレー、白の米粒のような楕円の粒子状、または繊維束状であることが多く、大きさは0.1mmから大きいものは5mm程度です。先の細いピンセットで触るとバーミキュライトやクリソタイルよりも固く重い感触があります。バーミキュライトの断片と見分けることは初め難しく、塗料や着色剤が付着していると色では判断しにくいこともありますが、色、形、感触で判断します。含有している場合、一般に大きな粒子は少なく、小さい粒子はより多く、細かい粒子よりも大きい粒子を見逃さないようにすることが重要です。実体顕微鏡での角閃石石綿の写真を示します。

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吹付けバーミキュライト(実体顕微鏡20倍) 中央やや右側の長い繊維束が角閃石系石綿
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吹付けバーミキュライト(実体顕微鏡20倍) 中央やや右側の長い繊維束が角閃石系石綿
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リビー産バーミキュライト(実態顕微鏡20倍) ピンセットで角閃石系石綿を取り出す。

 取り出した試料の一部を偏光顕微鏡にて形態、多色性、消光角、伸長の正負、屈折率を観察して繊維種を特定します。リビー産バーミキュライト中の角閃石繊維は非常に細く、しかし商業用石綿のような長くしなやかな典型的な石綿様繊維よりも短く直線的な繊維の形態が特徴です。その他の特徴は下表のとおりです。日本のJISでは使用されていない実体顕微鏡観察による石綿の分離作業が重要です。この作業には1gについて40分〜1時間を要します。

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偏光顕微鏡(400倍)の角閃石系石綿
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位相差分散顕微鏡(400倍)の角閃石系石綿


東京労働安全衛生センターでは上記の分析方法による分析および上記の分析とJIS法による分析を合わせて実施して総合的に判定することが可能です。

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Q14 これまでに分析された試料も全て分析をやり直す必要がありますか?

 Q2でお答えしたようにJIS A 1481は0.5%を超える角閃石(石綿とは限らない)、0.8%を超える蛇紋石(石綿とは限らない)の含有の有無を判定する方法でしかありません。基本的には再分析が必要と思われますが、下記のものは除いてかまわないと思われます。
・ 製品名がミクライトまたはウォールコート(クリソタイル等含有とされている)
・ 顕微鏡観察を実施しておりクリソタイル含有が明白なもの。
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Q15 石綿を含有する吹付けバーミキュライトのある自宅で空気中の石綿濃度測定を行いましたが外部とかわらない石綿濃度でした。このまま住み続けても大丈夫?
 空気中の石綿濃度測定は測定の際の条件に大きく結果が左右されます。石綿繊維は擦ったり、風が当たったりという力が加わったときに発生するので、測定時に人が入らず、窓も閉めた条件では測定値は当然ゼロに近くなります。(財)日本建築センターの調査では天井面への箒がけのときに27f/L、ドラーバーで削ったときに14f/Lの結果があります11)。測定の結果が外部とかわらないなど問題がないものであっても、条件が悪くなると飛散する可能性はあります。測定値よりも劣化の状況をよく見て、粒子が落ちているような状況の場合は除去する必要があることが多いと思われます。

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住宅居室天井の吹付けバーミキュライト
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階段室天井の吹付けバーミキュライト

 

Q16 天井の石綿含有吹付けバーミキュライトの対策として膜天井工事は有効ですか?

 膜天井工事は天井面に薄いシート状の膜を張り、天井面の吹付け材に接触したり、材料が落下するのを防ぐ工事ですが、石綿含有建材の囲い込み工法として認められたものではありません。少なくとも、石綿含有建材の囲い込み工法として性能が十分であることを証明した上で、石綿障害予防規則のレベル1の対策工事として実施するのであれば行っても良いと思われます。しかしこの場合には除去時にもレベル1の除去工事を実施することになりコストが高くなります。従って今後は基本的に除去工事を行うべきと思われます。これまでに施工された膜天井については現状維持で良いと思われます。

(膜天井の写真 準備中)

 

Q17 園芸用バーミキュライトには石綿は入っていないのですか?

 東京労働安全衛生センターが2009年に東京で販売されている3種類の園芸用バーミキュライトを分析したところ、全てが栃木県の業者が販売しており、石綿の含有はありませんでした。これらは国産と思われます。過去に販売されたもの、これら以外のものは不明です。EPA(米国環境保護庁)では2000年の調査で市販されている園芸用バーミキュライト16製品のうち5製品に石綿が含有しており、飛散性試験をおこない気中濃度測定を行ったところ1製品から顕著な石綿の飛散が認められたと発表しています3)。EPAでは石綿が飛散しやすいこの製品の使用を当面見合せることと、その他の製品についても、屋外で使用すること、石綿の飛散を防ぐために湿気を保つこと、衣類に粉じんを付着させて屋内に石綿粉じんを持ち込まないことを推奨しています。

 

Q18 バーミキュライト中の石綿を光学顕微鏡で分析してもわからないというのは本当ですか?

 バーミキュライトの断片は板状ですが、顕微鏡観察の際の粒子の向きよって繊維状にみえることがあります。またバーミキュライトの屈折率はクリソタイルと近いためこれと間違えやすいために光学顕微鏡では判断できないとの主張がありますが、いくつかの点に注意すれば十分に分析可能です。第1にバーミキュライトを過剰に粉砕しないことが重要です。細長い断片が多数あると判断は難しくなります。第2に位相差顕微鏡だけではなく形態観察に優れた偏光顕微鏡も使用します。第3に石綿のように見える繊維を観察しながら観察している試料のカバーグラスを針などで軽く突くと粒子が回転して板状であることを確認することができます。EPA法8)でも偏光顕微鏡での観察を採用しています。

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針で突くと粒子が回転することを示す3枚連続の写真(位相差分散顕微鏡100倍)
左:○の中に繊維状粒子、中央:1度突くとやや板状になり、右:さらに突くと薄い板状であることがわかる。

 

Q19 石綿の分析には様々な装置を使用しますが、それらの特徴を教えて下さい。

 石綿はその定義が「繊維状ケイ酸塩鉱物」であることから、形態と化学組成または鉱物種という2重の分析が必要になります。そのために分析が難しく様々な分析方法が考案されていますが、決定版といえるものはなく、通常は2つの方法を組み合わせるなどの工夫をして分析を行います。下表に分析方法の特徴を示します。
 ISO法では偏光顕微鏡が使用されることが知られていますが、実は実体顕微鏡と組み合わせて使用することが重要で、偏光顕微鏡のみでは観察できる試料の量が少ないため、実体顕微鏡で多くの試料を観ながら石綿と思われる繊維を取り出してから偏光顕微鏡で観察して鉱物学的特徴で石綿を特定しています。さらに詳細な分析を必要とする場合には観察すべき試料を特定して電子顕微鏡で観察します。これにより偏光顕微鏡と電子顕微鏡の弱点である観察試料量の少なさがカバーできます。
 米国のGunterはX線照射時間をJIS法の約20倍にすることによりX線回折法によりバーミキュライト中の角閃石を0.1%まで定量する方法を考案していますが12)、それは偏光顕微鏡などで角閃石の石綿様繊維とそうではない石綿以外の角閃石の割合を確認して分析することを前提としています。偏光顕微鏡とX線回折の組み合わせにより顕微鏡では算出が難しい重量%を求めることができ、かつ試料の量が多いため全体の平均的な数値を得ることができます。
 このように石綿の分析では戦略的に方法を選択することが重要なのですが、JIS法では、実体顕微鏡という効果的な道具を使用しない点、位相差分散顕微鏡法では粉砕した試料のごく少量しか観察しないために石綿の確認を困難にしてしまう点、X線回折法による定量では蛇紋石と角閃石が石綿以外の鉱物の存在の如何に関わらず全て石綿となってしまう点などに課題があります。

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Q20 バーミキュライト中の石綿分析方法を実際に学ぶにはどうしたら良いですか?

 東京労働安全衛生センターでは12月に実際の試料を使用してバーミキュライト分析トレーニングを予定しています。詳細ページへ

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Q1 アスベストとは何ですか?
 アスベストは繊維状のケイ酸塩鉱物が広い意味での定義ですが、日本の石綿障害予防規則では石綿の種類をアクチノライト、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)およびトレモライトとして6種類のみを規定しており、「繊維状」ついての具体的な定義はありません13)。米国では連邦規制でこれらの種類に加えて石綿特有の繊維構造(Asbestiform)があることとされています14)。石綿の発がん性は石綿特有の繊維構造に大きく依存していると考えられており15)、また同じ鉱物種であっても繊維状のものと繊維状ではないものがあることからも形態の定義は重要と思われますが、日本ではそれがありません。
 かつてはアスベストとは広範囲に商業利用された3種類(クリソタイル、アモサイト、クロシドライト)のみを指すことが多かったのですが、米国モンタナ州リビーのバーミキュライト鉱山での不純物としての角閃石系石綿による健康被害の表面化により、商業利用以外の繊維状鉱物が注目され、人体に石綿と同様の健康影響を与える繊維状鉱物全てを石綿と見なす方向になっており、EPA(米国環境保護庁)やATSDR(米国毒性物質登録管理局)ではこのような広い意味で石綿を使用し、ウインチャイトとリヒテライトを石綿に含んでいます2)3)。草稿段階の新たな石綿分析の世界基準と成るISO(国際標準か機構)の方法4)でも上記の6種類に加えてウインチャイトとリヒテライトも石綿として分析の対象としています。こうした流れに伴い分析上の形態観察の重要性が増してきているといえます。

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鉱物としてのトレモライト(上)と石綿としてのトレモライト(下)。全く形態が異なり、当然発がん性も異なるがX線回折法では区別できない。

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Q3 バーミキュライト中の石綿含有にはどのような場合が考えられますか?
 バーミキュライトの全てに石綿繊維が含有されている訳ではありません。バーミキュライトと石綿の鉱脈が近かった鉱山の場合、バーミキュライトに石綿が含有される訳で、アメリカのモンタナ州のリビー鉱山、アメリカのサウス・カロライナ州の鉱山のバーミキュライトに角閃石系のトレモライト・アクチノライト系の石綿が含有しているとされるのが典型例です6)。その後リビー産の角閃石繊維は、トレモライトは6%しか含有しておらず、国際的に新しい石綿繊維の定義に追加される可能性が高い、角閃石系繊維のウィンチャイトが84%、リヒテライトが11%とされています1)
中国では、河北省石家荘霊寿県、同炎寿県、江南省魯山県、ウイグル自治区上慰梨新彊で産出し1970年代以降日本にも輸入されていますが、石綿含有を確認した論文はないように思います。関係者の話によると、中国の鉱山は農民が農閑期に素手で掘って集める場合もあるそうで、精度管理が十分でない場合があった疑いはあります。既に十分検査済みならば良いのですが、過去から現在の中国産の蛭石の石綿非含有の確認が今後必要になる場合もあるかもしれません。
南アフリカではパラボラ鉱山産が有名で、南アフリカ産の焼成品には繊維状でないアンソフィライトが含有とする論文がありますが6)、鉱山で石綿に関する精度管理を厳密に行っていると伺いますし、トレモライト、角閃石系繊維のウィンチャイト、リヒテライトは検出されていないと思われます。日本の福島県小野町産に関する石綿含有を確認した論文はないようですので、詳細は不明ですが、石綿非含有と推定されてきたと考えられます。
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Q4 ウインチャイト、リヒテライトとは何ですか?
 米国の研究者によるリビー鉱山のバーミキュライト中に含まれる角閃石系石綿を分類した図を示します。X線波長分散スペクトロメーター付き電子線プローブマイクロ分析装置(EPMA-WDS)を使用しており、リビー産のバーミキュライトにはウインチャイト、リヒテライト、トレモライト、エディナイト、マグネシオアルヴェゾナイト(Magnesioarfvedsonite)、マグネシオリーベカイト(Magnesioriebeckite)の6種類の角閃石系繊維状鉱物が存在しており、これらなかには石綿特有の繊維構造を持つものから持たないものまで様々なバリエーションがあることを報告しています16)
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Meekerらによるリビー産バーミキュライト中の角閃石系石綿の詳細な分類

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Q09 バーミキュライト中の石綿の分析方法にはどのようなものがありますか?
 現在ウインチャイト/リヒテライトの分析方法を解説しているのはISO(国際標準化機構)のISO/CD22262-1(2009/10草案段階)とEPA(米国環境保護庁)のEPA/600/R-04/044があります。ISO法では、前処理により石綿以外の成分をできるだけ除いた試料を20-40倍の実体顕微鏡で観察して繊維状粒子を取り出し、それをPLM(偏光顕微鏡)により鉱物学的特徴を確認して定性する、さらに必要に応じてエネルギー分散型X線回折分析装置を使用して詳細に分析する方法を採用しています。EPA法は米国で広く普及している屋根裏バーミキュライト断熱材中の石綿を分析する方法で、前処理として水中に試料を投じバーミキュライトと石綿の比重差により石綿を分離する方法を採り、その他は基本的にISO法と同様です。日本のJIS A 1481のバーミキュライト分析は試料を粉砕しX線回折法により角閃石のピークを測定し、それをトレモライト0.5%含有バーミキュライトおよびクリソタイル0.8%含有バーミキュライトのピークと比較して含有の有無を判定する方法です。この方法では角閃石または蛇紋石のピークは確認することができますが、それが石綿とは限りません。つまり石綿ではないものを石綿としてしてしまう可能性があります。また当然0.5%以上の角閃石または0.8%以上の蛇紋石よりも少ないものは含有なしとしてしまいます。
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参考文献

1) Patricia A Sullivan, Vermiculite, Respiratory Diseases, and Asbestos Exposure in Libby, Montana: Update of a Cohort Mortality Study 115(579-585) (2007).

2) ATSDR: Summary Report Exposure to Asbestos-Containing Vermiculite from Libby, Montana, at 28 Processing Sites in the United States (2008).
http://www.atsdr.cdc.gov/asbestos/sites/national_map/index.html

3) EPA, Sampling and Analysis of Consumer Garden Products that Contain Vermiculite (2000).

4) ISO/CD 22262-1, Bulk materials- Part 1: Sampling and qualitative determination of asbestos in commercial bulk materials (2009年10月現在草稿段階、下記ページでは閲覧できません。)
http://www.iso.org/iso/iso_catalogue/catalogue_tc/catalogue_detail.htm?csnumber=40834

5) 吉田國夫、鉱産物の知識と取引−工業用鉱物編−, 588−598, 通商産業調査会, 東京(1992).

6) Farhad Moatamed, et al, Fiber Contamination of Vermiculites :A Potential Occupational and Environmental Hazard,41(207-218),Environmental Research,1986

7) Bernard E. Leake, Alan R. Woolley, Charles E. S. Arps, William D. Birch, M. Charles Gilbert, Joel D. Grice, Frank C. Hawthorne, Akira Kato, Hanan J. Kisch, Vladimir G. Krivovichev, Kees Linthout, Jo Laird, Joseph A. Mandarino, Walter V. Maresch, Ernest H. Nickel, John C. Schumacher, David C. Smith, Nick C. N. Stephenson, Luciano Ungaretti, Eric J. W. Whittaker, Guo Youzhi: Am Mineral, 82, 1019 (1997).

8) EPA/600/R-04/044, Research method for Sampling and Analysis of Fibrous Amphibole in Vermiculite Attic Insulation, (2004).

9) JIS A 1481, 建材製品中のアスベスト含有率測定方法,(2008)

10) 寺山玲児, 寺田和申, 小西淑人: 第46回日本労働衛生工学会 第27回作業環境測定研究発表会抄録集, 168 (2006).

11) 財団法人日本建築センター,公的賃貸住宅等のアスベスト含有に関する調査報告書(2007)

12) Mickey E. Gunter, Matthew S. Sanchez: Per. Mineral, 77, 35 (2008).

13) 中央労働災害防止協会:「石綿障害予防規則の解説」第2版 (2006)

14) U.S. Federal Regulations, Part 763
http://www.gpoaccess.gov/CFR/

15) NIOSH: Revised Draft NIOSH Current Intelligence Bulletin Asbestos Fibers and Other Elongated Mineral Particles: State of the Science and Roadmap for Research (2006)
http://www.cdc.gov/niosh/review/public/099-A/

16) G. P. Meeker, A. M. Bern, I. K. Brownfield, H. A. Lowers, S. J. Sutley, T. M. Hoefen, J. S. Vance: American mineralogist, 88, 1955 (2003).

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